研究内容

1.多能性幹細胞(iPS細胞、ES細胞)

我々の研究室では、ヒト多能性幹細胞に対して、細胞自律的な分化を促すことで、2次元の培養系にて、眼の後眼部から前眼部にわたって、広い範囲の発生を再現する新たな方法を開発しました。この方法では、ヒトiPS細胞、ES細胞から4つの帯状構造からなるコロニーが誘導され、各領域には、発生期の眼を構成する主要な細胞系譜(角膜、網膜、水晶体など)が、眼発生を高度に模倣する形で誘導されることから、2次元の眼オルガノイドであると言えます(Hayashi R, et al. Nature 2016, Nature Protoc. 2017)。本技術を用いて作製した2次元眼オルガノイドから単離した角膜上皮細胞を用いた世界発となるiPS細胞による角膜再生医療を成功させました。現在、足場ECMや物理的刺激による細胞分化調節機構の解明研究や新たな再生治療法の開発に取り組んでいます。

2.間葉系幹細胞

私たちは間葉系幹細胞(Mesenchymal Stem Cell, MSC)を用いた新規治療法の開発にも取り組んでいます。これまでMSC由来の培養上清による、角膜上皮細胞への抗EMT(Epithelial -Mesenchymal Transition)効果や、MSC培養上清に含まれるExosomeに、角膜上皮前駆細胞のコロニー形成促進作用と分化の抑制作用を見出しています。そのため、MSCの培養上清が新規の疾患治療剤として有望であることが示唆されました。これからも、MSCやその培養上清による幅広い疾患治療の可能性を模索していきます。

3.角膜上皮幹細胞

角膜上皮幹細胞は、角膜上皮と結膜上皮の間に存在する輪部と呼ばれる部位に特異的に存在しており、上皮系幹細胞の研究モデルとして広く研究されています。角膜上皮幹細胞は他の上皮系幹細胞(皮膚上皮など)と共通した性質を持つ一方で、角膜は他の上皮系組織と異なり、無血管、透明とういう特徴的な性質を有しています。本研究室では角膜上皮幹細胞を用いて、幹細胞維持機構の解明研究に取り組んでいます。